大判例

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東京高等裁判所 昭和22年(ナ)56号 判決

原告 下村元治郎 外二名

被告 東京都選挙管理委員会

一、主  文

原告等の請求はいずれも之を棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、請求の趣旨

原告等訴訟代理人は被告が訴外青山政行外四名よりなされた昭和二十二年四月三十日執行の東京都北区会議員選挙に於ける選挙無効に関する異議申立に関する訴願に対し昭和二十二年八月二十三日なした裁決を取り消すとの判決を求めた。

三、事  実

昭和二十二年四月三十日東京都北区の区会議員の選挙が執行せられ原告等は執れも当選人であるところ被告委員会は訴外青山政行、櫻沢安司、藤田類、稻葉藤松、片野眞猛等より申立てた訴願に対し昭和二十二年八月二十三日次のような裁決をして同月二十六日之を告示した。

すなわち「右選挙に於いては都内に六月以來居住することが有権者としての資格要件であるが之が資格要件を欠く無資格者二十六名が投票したため二十六名の無効投票があつたものと認め右無効投票二十六票を各当選者の得票数から控除した数が次点者の得票数より少い場合は選挙の結果に異動を生ずるものとし右選挙における次点者岩脇慂信の得票は六九五票であるから当選人中この無効投票二十六票によつて影響を受ける者すなわち当選に異動を生ずる虞のある者は当選者三名すなわち原告渡利(得票数六九八)原告大野(得票数六九九)原告下村(得票数七二〇)であつて当選人中埴原小次郎外三十六名についてはその当選に異動を生ずる虞がない」との理由によつて「昭和二十二年四月三十日執行の北区会議員選挙は之を無効とする。但し七二一票以上の得票者埴原小次郎外三十六名はその当選を失はず。昭和二十二年五月三十一日王選発第六五号北区選挙管理委員会のなしたる決定はこれを取消す。」との裁決をした。

而して原告等の得票数が右裁決に示すとおりであることは認めるが次点者岩脇慂信の得票は六九四票であり且本件選挙に於ては右のような無効投票は全然存在しなかつたものであるから地方自治法第六十六條第四項に基いて右裁決の取消を求める爲め本訴に及んだと述べ被告の主張に対し選挙権行使に必要な六月以來居住とは本件選挙に於ては昭和二十一年九月二十三日以來東京都内に居住すること、被告主張の二十六名が昭和二十一年九月二十四日以後東京都内に居住するに至つた事実は爭はないと述べた。(立証省略)

被告指定代理人は主文第一項同旨の判決を求め答弁として昭和二十二年四月三十日東京都北区会議員の選挙が執行せられ原告等が当選した事実訴外青山政行外四名よりの訴願に対し被告が原告等主張のような裁決をして之を告示した事実、原告等並に次点者岩脇慂信の各得票数が原告等主張どおりであることは認めるがその他の原告等の主張は之を爭う。本件選挙は当時施行中の東京都制に基いて執行せられたもので同法によれば東京都に六月以來居住することを選挙権者の資格、要件と定めてあり本件選挙に於ては右資格要件は昭和二十一年九月二十三日以來東京都に居住することゝなるところ、之が資格要件を欠き昭和二十一年九月二十四日以降東京都に居住するに至つた末尾添附の「無資格投票者名簿」記載の二十六名が本件選挙に投票し二十六票の無効投票が存在するから被告のなした前記裁決は正当であると述べた。

四、理  由

昭和二十二年四月三十日東京都北区会議員の選挙が執行せられ原告等が当選した事実、右選挙に対し訴外青山政行外四名がなした訴願に対し被告が原告主張のような裁決をなした事実、原告等並に次点者岩脇慂信の得票数が原告等主張どおりであつたことは当事者間に爭がない。而して右選挙が当時施行中の東京都制に基いて執行せられた事実並に同法によれば選挙権者の資格要件として東京都に六月以來居住することに定められてあり本件選挙に於ては昭和二十一年九月二十三日以來東京都に居住することゝなることは当裁判所に顕著であるところ末尾添附の「無資格投票者名簿」記載の二十六名が本件選挙に投票した事実並に同人等が昭和二十一年九月二十四日以後に東京都に居住するに至つた事実は原告等の認めるところである。然らば右二十六名は無資格者であつてその投票が無効であつたことは明かである。而してこの場合この無効の二十六票が何人の得票の内に含まれて居るかは秘密投票を嚴守する制度の下に於ては識別不能であるから可能性を標準として各当選人の得票数から夫々右二十六票の無効投票を差引きその結果を次点者の得票数と対比しそれより票数の少くなつた当選人の当選を無効とするの外はなく本件に於て右二十六票の無効投票を原告等三名の各得票数から控除すれば、原告大野原告渡利の得票数は次点岩脇慂信の得票数六九四票より少くなり原告下村の得票数は次点者の得票数と同数となること明かである。然らば原告大野渡利の当選は無効であり原告下村は、他に同数の得票者があるときは更に法定の手続によつて当選人と決定せられた上始めて当選人となり得る可能性はあるにしてもその得票数丈からして直ちに当選したものと認めることは出來ない。されば原告下村の当選も無効と云わなければならない。尤も東京都制第五十二條によれば選挙権のない者がした無効の投票はその帰属が不明であるが仮にこれを各当選人の有効投票から控除した結果選挙の結果に異動の生ずる虞のあるものと虞のないものとを区分することが出來るときは当選に異動を生ずる虞のないものに限り当選を失わないものとなすべきであるが本件裁決当時は東京都制は廃止となりその準拠すべき法律は地方自治法でありその第六十七條によれば東京都制第五十二條と大体同趣旨であるのに但書の規定が削除せられている。このように但書を削除したのは選挙権のない者が投票したため選挙の結果に異動の生ずる虞のある場合には選挙の全部若しくは一部を全面的に無効とする趣旨ではなくて純然たる当選の効力に関する事項と考えたものと解するを相当とすべく選挙の全部か一部を無効とし人を区別して当選の効力を異にすることは不合理である。

然らば本件裁決に於て当時既に廃止せられた東京都制第五十二條を適用し本件選挙を無効とした点は不当であるがその結論に於て当選の問題の裁決の結論と同一に帰し原告等三名の当選を無効とした本件裁決は相当である。從つて之が取消を求める原告等の本訴請求は理由がないからいずれも棄却すべきものとし民事訴訟法第八十九條第九十三條第一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 渡辺葆 浜田潔夫 牛山要)

(別表「無資格投票者名簿」省略)

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